山本拓人さんの取り組み

初めまして,数学カフェさんのご好意でこの記事を寄稿させて頂く山本拓人と申します.

この記事では

  1. 私がこの記事を書くまでの経緯
  2. 私と数学と講師業

という2つのテーマで書きたいと思います.

この記事を書くまでの経緯

まずは数学カフェさんの部外者である私がこの記事を書くことになった経緯から説明したいと思います.

数学カフェさんと私の馴れ初め

私が数学カフェさんと最初に接点を持ったのは,数学カフェさんのツイートに私がリプライをした先月のことでした.

私は社会人向けの数学教室で講師をしているのですが,その数学教室のオンラインの少人数セミナーで「ルベーグ積分」のオンライン講義を担当することになりました.

実はほぼ同時期に数学カフェさんも同時期にルベーグ積分の企画を立てられていたのですが,数学カフェさんは数学教室でルベーグ積分の講座が開講されることを当初はご存知なかったようです.

そして,そのことに気付かれたときにされたのが以下のツイートです.

「ロマ数トレラン」というのは,私が担当する「ルベーグ積分」などの少人数セミナーの企画名です.

私はルベーグ積分を研究で基本的な道具として用いる身だったので,数学カフェさんのような一般の団体でルベーグ積分の企画があることに感動を覚えました.

この数学カフェさんのツイートに対して気にしていない旨をお伝えしようと送ったのが,次の引用リツイート(返信)です.

実はこれが私は数学カフェさんの初コンタクトです.今から見れば「いや,お前誰やねん!まず名乗れよ!」と思われてもおかしくないなんとも不躾なリプライです.

というか,思われていたかもしれません.その節は本当に失礼しました.

「一緒にルベーグ積分を数学を楽しみましょう!私は敵ではありません!」的なことをなんとか伝えたかったのと,私の本来のコミュ障が組み合わさってこのようなツイートになってしまったのです.

自分のコミュニケーション能力のなさに情けなさを感じる次第ですが,この無礼なツイートに対して返してくださった引用リツイート(返信)が次のツイートです.

見ず知らずの人である私からのイカれたツイートを仏のように受け止めてくださる,なんと暖かい返信でしょうか!

この返信を読んだ直後に私が数学カフェさんをフォローしたのは書くまでもありません.

これが私と数学カフェさんの最初の接点です(「接点ではなく交点ではないか」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが,余白が狭すぎますので接点であることの証明は省略します).

(※中の人より。このときは、「わ!山本さんという面白い人がいる!」と思いました笑。ルベーグ積分はいいぞ。(先日ルベーグ測度に入りました。))

 

数学カフェさんの協力者として応募

それから数学カフェさんのツイートを拝見するたびに「面白い活動されてるなあ」という思いが少しずつ膨らみ,数学の研究や講師をしている身として次第に「いつかは関わりたいなあ」と思うようになっていました.

そんな折,数学カフェさんがHP(ホームページ)の整備をするために「WordPress(ブログ)の使用経験がある人」を募集されているツイートを見かけました.

私は5年以上WordPressでブログを書いていましたから,「これは『いつかは関わりたいなあ』の『いつか』が来た!」と思い即座にダイレクトメッセージを送りました.

すると,数学カフェさんも最初の接点のときから,私のツイートをたまに目を通して下さっていたようで,その後すぐに快諾の返信を頂きました.

HP整備の作業では進めるたびに相談事が増えていったのですが,数学カフェさんのご連絡はいつも迅速かつ丁寧で,私が指示を仰ぐといつでもほんの数分で返信をくださったのは印象的でした.

そのような数学カフェさんの気遣いの行き届いた対応によって,私の作業は大きな困難もなく終了しました.

その後,数学カフェさんに「ウェブ制作のご協力者ということで山本様と取り組みをご紹介する記事を作成したい」という旨のお話を頂きました.

私としては願ってもないお話しでしたから当然お受けしました.

これが私がこの記事を数学カフェさんのブログへ寄稿させて頂けることになった経緯です.

私と数学と講師業

ということで,以下この記事は私の話になるのですが,ここで自己紹介をしておきます.

私にはいくつか肩書きがあるのですが,2020年12月現在では例えば

くらいは名乗ることができるかもしれません.また

  • 数学(仕事?)
  • ピアノ(過去の演奏
  • スポーツ(スキー,バドミントン,柔道,ボルダリングなど)
  • 読書(最近のマイブームは伊坂幸太郎さん)
  • ぷよぷよ(GTRと不定形が好き)

などいろんな趣味があり,良く言えば「多趣味」,悪く言えば「器用貧乏」です.

なお,「数学」の後ろに(仕事?)と付け加えたのは,以前「数学が趣味」と言ったところ当時の指導教官に「君はそろそろ数学を『仕事』と言わないといけません」と指摘されたからです.

しかし,やはり趣味でもあることも確かなので,このように書くことにしています(笑).

数学者を志したきっかけ

私が数学の道に進もうと最初にハッキリ意識したのは中学2年生のときです.

私は当時から数学が好きで,当時の学校の数学の先生に数学で絡んでいくことがよくありました.

どのような話の流れだったかは忘れましたが,あるとき先生との話のなかで「数学を研究する仕事がある」ということを知りました.

毎晩すぐ目の前の山から狸が降りて来るような片田舎で土にまみれた小学生時代を過ごしていた私にとって「ケンキュウ」は全く縁のない世界でしたが,初めて知ったその世界の存在に衝撃を受け,同時に大きな魅力を感じたのは今でもよく覚えています.

数学の研究についてより知りたい旨を先生に伝えたところ,後日先生は私に数冊の本を貸してくださいました.

その中には当時話題になっていた小説「博士の愛した数式」(小川洋子著/新潮文庫)もありました.

同時に複素数など中学数学では扱わないような内容の数学の本(タイトルは失念……)も貸してくださり,それまで学校の授業でしか数学を知らなかった私は数学の世界の広さに感激しました.

そこで私は初めて「数学者」を志すようになりました.

現在はまだ博士課程の学生の身とはいえ「数学をされているなんてすごいですね」と言われることがあるのですが,なんだかその言葉には少し違和感を感じてしまいます.

子供はホームランを打つ「プロ野球選手」に,テレビで役を演じる「女優」に,最近では「YouTuber」に憧れを抱いたりします.

私の場合,たまたま「数学者」に憧れを抱いて今に至っているだけなんですね.

野球が好きでプロ野球選手として生きていきたい人も,ゲームが好きでゲーム実況のYouTuberで生きていきたい人も,数学が好きで数学で生きてきたい私も全て同じだと思うんですね.

仮に私にすごいところがあるとすれば「数学をしていること」ではなく,「中学2年生から飽きずに好きなことを続けていること」なのかもしれないなあと思ったりします.

数学の楽しさを共有したい気持ち

私は数学を教えるのもとても好きなのですが,そうなるきっかけとなったのは高校で数学研究部に所属したことだと思います.

毎年1月中旬には「数学オリンピック」の予選が行われます.

数学オリンピックとは高校2年生以下が対象の数学力を競う大会で,最終的に日本から選ばれた代表選手は国際数学オリンピックへと駒を進めることができます.

私が通っていた高校では,秋頃に数学オリンピック対策の授業を放課後に開講してくれるなど,公立高校でありながらもより高いレベルの勉強をしやすい環境だったと思います.

先ほどの中学の数学の先生に数学オリンピックの話は聞いていたので,私は意気揚々とその数学オリンピック対策の授業に参加しました.

何回か授業を受けていると別のクラスの同級生とも顔見知りになってくるわけですが,そこで知り合いになった二人の友人に数学研究部へ誘われました.

当時は「え?数学研究部とかそんなんあんの?全然知らんかったわ」と思いましたし,実際に入学当初は数学研究部がなく彼らが自分たちで部活として立ち上げたとのことで私が知らないのも当然でした.

とはいえ,やはり数学はずっと好きでしたから,私はその場で入部を決めました.

私を誘ってくれた友人も数学オリンピックの授業を受けるくらいですから,数学が好きですぐに意気投合しました.彼とは今でもたまに連絡を取り合っています.

数学研究部では「誰かが本で予習をしてきてそれをみんなに授業をする」といういわゆるセミナー形式の授業をメインで行い,文化展示発表会(いわゆる文化祭)では懸賞問題などを作成していました.

そこでは線形代数,群論など大学数学にも触れることがあり,私は複素解析の初歩の授業を「すぐわかる複素解析」(石村園子著/東京図書)をテキストとして担当した覚えがあります.

今思えば微分や極限についてずいぶん雑な議論で満足していましたし,よく理解していたとはとても言えないのですが,数学研究部の週一回の活動で部員のみんなと数学を語らうのはとても楽しい時間でした.

私が今でも授業では「双方向的」であることを大切にしています.

数学研究部の活動では,あーだこーだ,そうや違うやのとみんなでやりとりするのが楽しかったですし,そうして

  • 話を聞いて理解すること
  • 自分の考えを論理立てて説明すること

が自分の数学の理解の養成に繋がったと思っています.

このような「数学の楽しさの共有」が私の中ではとても楽しいことでしたから,それを続けていきたいと思い今でも数学を教える仕事をしています.

ありがたいことに私の授業は好評のようで,数学教室で私の個別の体験授業を受けた方の中で95%以上の方がそのまま入会されています(これまで入会されなかったのはお一方のみ).

私の授業アンケートでは「楽しい」という言葉を皆さんはよく書いてくださるのですが,これは「数学研究部の経験が生きた結果かなあ」と考えたりしています.

対面授業とオンライン授業

やはり新型コロナウイルスにより,かなり授業が減ってしまった時期がありました.

そんな中でもPCを所持していらっしゃる生徒さんにはオンライン授業にも対応して頂くなどして,なんとか窮地を乗り越えたというのが当時の正直な状況でした.

自らの仕事で生活費と学費を賄っている勤労学生の私としては授業コマ数の減少は死活問題だったので,オンライン授業が増えてきたことでなんとか首の皮が繋がったところがありました.

現在はその流れで,オンラインの個別授業や少人数セミナーを担当することが多くなってきました.

オンラインの方が便利なことも多い一方で,実は私としては残念な面も少なからずあります.

その大きな理由の1つは,オンラインでは「双方向的」な授業が少し難しくなってしまう点です.

教える側として教える技術ももちろん必要なのですが,それよりも重要なのは生徒さんの様子を見て話を聞いて,その生徒さんに適切な説明をすることです.

個別授業ではその場で質問してもらうことができるのですが,集団授業ではなかなかそうはいきません.

ですから,生徒さんの様子を見て理解度を判断して説明を変えるのは当たり前にしなければならず,この意味で講師という仕事は喋る以上に観察して感じることが重要だと言ってよいと思います.

オンライン講座の場合には生徒さんがカメラをOFFにされていることも少なくないので,この場合はかなり慎重に授業を進めています.

とはいえ,「双方向的」であることをある程度諦めれば,日本だけでなく世界中のどこにいてもオンライン授業が可能なのは,やはり極めて大きなメリットです.

実際,自室に居ながらにして国際的な研究集会に参加することもありますが,これは昨年まではほとんど考えられなかったことです.

そういった新しい生活様式への変化はポジティヴに言えば新しい時代の幕開けなのだと思っています.いまは苦しい時期ですが,後に「あれは『産みの苦しみ』やってんなあ」と思える日が1日でも早く来ることを祈りたいところです.

講師として以外の活動

数学講師の他には,上でも書いたように2つのブログと1つのYouTubeチャンネルを運営しています.

いずれもネーミングセンスが感じられないというツッコミは禁止です.

ブログは閲覧数が7万に達する月もあったり,Google検索でトップに表示される記事も少なくないので,そこそこ良い記事が揃っているのではないかと自負しています.

気になる方はリンクから記事一覧に飛んで頂けると幸いです.

一方のYouTubeチャンネルは今のところこのチャンネルでは大学受験に主眼を置いた高校数学の解説チャンネルです.

今はまだチャンネル登録数が少ないのですが,これからどんどん知名度が上がっていくはずです(上がっていくといいなあ).

最後に,このような記事を書く機会をくださった数学カフェさんに感謝致します.

数学カフェさんの活躍をこれからも期待しております.

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2020年の活動まとめ |

[…] デザイン等はまだ改善の余地がありますが、今後充実させていきたいと思います。 HP制作にあたっては、 山本様、しらたき様、どんぐり様、近藤祥子様、岩淵夕希様にお手伝い頂いております。 皆様的確なご助言・ご協力を下さり、大変感謝しております。 (コンテンツの移行作業はまだ続いておりますが…) […]

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