【講演ノート】【第34回】D加群の理論とその広がり 

第34回数学カフェの講演ノートを公開します.

講演者:池祐一さん HP

2018年に博士(数理科学)を取得. 専門は超局所層理論および位相的データ解析 (TDA).
博士論文では層の圏に入るパーシステント的距離と層のハミルトン 変形の関係について調べ,
シンプレクティック幾何学へ応用( 浅野知紘氏との共同研究に基づく).

2018年4月に株式会社富士通研究所に入社後, フランス国立研究機関InriaとのTDAに関する共同研究に従事.2021年4月より富士通株式会社に所属.

2019年10月より科学技術振興機構ACT-X研究者, 2020年8月より早稲田大学理工学術院客員次席研究員.
※このご所属は講演当時で、現在は東京大学大学院情報理工学系研究科で助教をされています.
その他,個人サイト「超局所的物置」 やMathlogで数学に関する情報発信を行っている.

講演概要

D 加群は線形偏微分方程式系を代数的に扱う道具として,1970 年頃に佐藤幹夫によって提唱され柏原正樹によって理論が構築されました.今回の講演では,D 加群の考え方はどういうものなのか・何がうれしいのかについて雰囲気が分かるようにお話ししたいと思います.難しそうな D 加群(そして実際難しいと思います)ですが,その基本的なアイデアをじっくりと時間をかけて説明してみます.

線形代数ではまず行列を習いますが,あとで行列は基底を取ったときの線形写像を表示する方法だと分かったのでした.つまり,線形写像が本質的で行列はその一つの表示にすぎないのでした.実は線形微分方程式系と D 加群の関係もこれと似ていて,線形微分方程式系は D 加群の一つの表示とみなせます.このように考えて,微分方程式という具体的な表示ではなくて本質的な D 加群を調べようというのが D 加群の理論なのです.

D 加群の理論は数学の広範囲の分野と関係しています.講演の後半では,その広がりの中心的役割を演じる「リーマン・ヒルベルト対応」のお気持ちを説明してみます.微分方程式が与えられるとそこからトポロジー的なデータが取り出せますが,逆にトポロジー的なデータから微分方程式を作ることができるかということを考えます.この対応を D 加群の観点から述べたものがリーマン・ヒルベルト対応です.この対応がどのように様々な数学分野をつなぐかを講演者の話せる範囲で説明してみたいと思います.

講演申し込みサイト(講演は終了しました)

https://mathcafe-34.peatix.com/view

講演ノート