第33回数学カフェの講演ノートを公開します.
講演者:三浦真人さん HP
※ご所属は講演当時です。
東京大学大学院特任研究員
ご専門は Calabi-Yau 多様体、ミラー対称性、代数ビジョン、可視化、次元削減
2016年数学カフェサイエンスアゴラ出展「4次元を見てみよう」では、三浦さんの研究成果をVR機器に実装し、市民の方に体験していただきました。 約4年後の進展や関連する研究についてお話して頂きます。
講演概要
射影空間は、幾何学を展開する上で、とても自然な対象です。射影空間を舞台とする幾何学は射影幾何学(projective geometry)と呼ばれ、その出自は少なくとも 15, 16 世紀に活躍した芸術家らによる透視図法の研究にまで遡る、古い学問であります。当時はすでに、ピンホールカメラなどの様々な光学装置が、デッサンの場で活用される技術となっていました。その研究は、現代では代数幾何学(algebraic geometry)として、装いを一変するほどに大きく発展しています。
一方、20 世紀後半にはカメラで撮影した画像から 3D 形状を再構成するアルゴリズムが盛んに研究されました。とくに同一の被写体を撮影した複数の画像から被写体の 3D 形状を再構成するという問題は奥が深く、その理論的側面は、多視点幾何学(multiple view geometry)と呼ばれるコンピュータ・ビジョンの一分野を築くに至りました。多視点幾何学の問題の一部は、19 世紀の射影幾何学においても考えられていましたが、80 年代、90 年代の計算機科学者らの研究によって、改めて大きな発展を遂げることになったのです。
多視点幾何学で扱うカメラの最も単純な数理モデルであるピンホールカメラ模型は、代数幾何学の言葉でいうと、射影空間における射影に他なりません。射影空間における射影は、代数多様体の間の有理写像(rational map)の典型的な例であり、代数幾何学のより高度なアイデアに触れる上でも良い出発点になります。そこで今回は、多視点幾何学における再構成問題を題材とし、射影空間や、射影空間における射影がどのようにコンピュータ・ビジョンの文脈に現れてくるのかを説明すると共に、関連する代数幾何学の入門的なトピックについてお話をします。とくに、多面体を用いて易しく記述できるトーリック多様体(toric variety)という代数多様体を例にとり、再構成問題がどのように代数幾何学的に記述されるのかを見ていきます。
イベントは終了しています。
第33回数学カフェ申し込みサイト:概要などが記載されています。
講演ノート
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