講演者のご感想
皆さん、はじめまして。数学カフェ参加者のぱっちと申します。
今回は、この場をお借りして私の場合の数学カフェに参加したきっかけと、数学カフェのよさについてお話ししたいと思います。
私は学生時代数学を専攻しており、現在は就職していますが、社会人になってからも数学を学びたいし、自分なりにできる研究もしたい、と思っていました。
そんな折、web検索で数学カフェが催す講演情報を見つけました。数学により良く取り組んでいくための情報・同志・そして情熱を得るため、参加することを決めました。会場は、数十の席に所狭しと詰めかけた方々による熱気に満ちていました(注)。いろいろな方と話していると、ここには様々なバックグラウンドを持った方々が集まっていることに気づいてきました。私と同じように学生時代は数学科で就職した現在も数学を究めんと追い続けている人、数学や理学のアカデミックな仕事を持っている人、学生時代は工学系専攻で現在はより純粋数学方面への興味を持っている人、パズル好きな人、現役の学生さん、… 講演のテーマが気になりその回限りで参加される方も、毎回コンスタントにお見かけする方もいらっしゃいます。ほとんど唯一見出せる共通点は「数学、もしくは数学をしている人に興味がある」という点でした(職業は似ている場合も多いですが)。参加者の裾野は広く、頂は高くという、クセになるようなコミュニティになっていると思います。
それぞれのイベントで徐々に広がる様々なバックグラウンドの方々とのコミュニケーションは、幅広い交流のようでもあり、猛者を相手にした修行のようでもあります。
自分とバックグラウンドの異なる方との会話では、「そんな所でそんな数学を活かす方法があるのか」と新たな発見がありますし、似たバックグラウンドの方からは、自分も興味を持っている分野の情報を聞かせてくれることや、行き詰まっている問題に対しヒントとなる情報を共に考えていただくこともあります。学生時代なら大学に居ればこのような話をできる人々が比較的近くにも居ましたが、社会人になってもこのような繋がりが持てるコミュニティは貴重ではないかな、と思います。
毎回の講演は(個人的には)ハイレベルなもので、おそらく最初から最後まで完全に理解できる参加者は少ないと考えていますが、その講演から「数学の果てしなさ」を感じるのを目当てに来られる方もいるようです。また、理解が難しいところも含め、学生時代に受けていた講義よりも講師の方の説明が丁寧で、噛み砕いて説明しようとしてくれているな、と感じることも多いです。講演自体が難しすぎる場合も、しばしばそのための予習会・復習会が催されており、そこでは参加者同士の質疑応答もより気軽に行われ、数学に対する理解・実感をより深められる機会になると思います。
また、私の場合は、自分が興味を持っている数学の論文についての内容を発表する機会もいただくことができました。その分野は元々の私の専門分野では無いですが、比較的カジュアルな場で「発表」という経験をでき、それに対するフィードバックを得られたのも数学カフェのような場ならではかな、と思います(正式なアカデミアの場にて半端な知識で発表しようものなら教授らにこっぴどく問い詰められるし)
また最近は、mocriというアプリを用いたオンラインでのもくもく会も催されているので、よく参加しています。最初と最後の挨拶以外特に会話を続けることもなく(質問があればチャットで聞けますが)、ただ「今日はこの人がこのもくもく会に参加しているな」という情報を眺めるくらいの違いなのですが、なぜかその違いのおかげで、参加中の2時間は比較的集中して自分の課題に取り組むための後押しをしてくれます。不思議です。
以上、個人的なお話になりましたが、数学カフェとの出会いとそこで享受しているありがたみのお話でした。
数学カフェにご興味を持ってくださった方々、参加してみて「合う・合わない」の相性などが分かることもあると思いますので、一度試しにイベントにご参加なさってみてはいかがでしょう。ともに数学のお話ができることを楽しみにしています。
編集部より
数学カフェがどんな場所なのかとても分かりやすく書いて頂きありがとうございます。社会人になると勉強を続ける意欲を保つのが大変なこともありますよね。数学カフェが情熱を持ち続けられる場所になっていると知りとても嬉しいです。ご自身で読まれている論文の内容を発表していただくことで、アカデミアから市民への一方向のアウトリーチに留まらない、産学のつながりを持てるような活動になっていると思います。こうした交流が持てることは1つの数学カフェの良さだと思いますので、コロナ禍でも、数学や周辺分野の方々との交流の機会が持てるよう工夫したいと思います。(現状では、研究者以外に発表のお声掛けをするなどしておりますが、どんな人が来ているか参加者にわかるようにしたほうが交流が進みやすいかもしれませんね。)今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ご寄稿ありがとうございました。
注:コロナ禍においてはすべてのイベントをオンラインに切り替えています。