実施概要
今回のテーマは、生物の流体数理です。
東京大学数理科学研究科特任助教の石本健太先生をお招きし、ご講演していただきます。
- 日時:6月15日 10時半から16時(10時開場)
- 場所:東京大学駒場キャンパス数理科学科棟 002・003教室
開催場所の詳細は右側の案内を御覧くださいませ
※入り方が少し難しいので詳細な案内図を後日こちらに掲載します。
講師ご紹介
ご講演者:石本健太先生
(自己紹介HPより一部引用)
幼い頃から凝り性な割には飽きやすい性格でしたが、京都・鴨川デルタで川の流れを眺めて自然の複雑さを改めて感じて以来、流体力学にのめり込むようになりました。流体力学は水や空気など日常にあふれている流れに関する物理学の一分野で、数学や工学と密接に関わって発展してきました。その流体力学の数理を生物の遊泳や飛翔の問題に応用し、運動や力学の観点から生命の神秘にアプローチしたいと考えています。中でも、細胞スケールの微小生物の遊泳がメインターゲットです。日常のふとした瞬間に湧き出てくる素朴な感覚を大切にしていきたいと思っています。
研究分野
流体力学、応用数学、数理生物学。特に、生命の流体数理。
数学・物理学・化学・生物学・医学・工学・・・などが交差する学際領域。
研究テーマ
- 流体中の生物の変形と流体方程式の対称性
- 生物のスケールと遊泳の相似性
- 鞭毛や繊毛による遊泳の安定性と効率性
- 精子の遊泳と受精に関わる流体現象
- 非ニュートン流体と流体構造連成問題
- 生物画像データの解析と数理モデリング
- 遊泳問題のための数理的、数値的な解析手法
石本先生のより詳しいご紹介は以下のサイトを御覧ください。
概要
流体力学は空気や水といった流れる物体の運動を研究する学問分野ですが、人類史上最も成功した「現象を記述する数理モデル」研究のひとつとも言えます。オイラーが流体の運動を数学的に記述し、のちにストークスが流体の粘性を考慮した数理モデルを生み出しました。後者の数理モデルは、現在ナビエ・ストークス方程式の名で知られており、その記述可能な対象の広さと現象の多様性から数学者を魅了してやみません。今回の講演では、現象を記述する数理モデルとしての流体力学の解説に加え、流体力学を用いて生命現象を数理的に記述する試みの一端をお話したいと思います。
講演は3部からなり、第1部では「数理モデルとしてのナビエ・ストークス方程式の理解」を目標とし、ヒルベルトの第6問題「力学の公理化」に触発されて誕生した有理力学を意識しながら、ナビエ・ストークス方程式を導出します。また、この方程式が記述する様々な流れを紹介したいと思います。第2部では、流体中の微生物の運動に対する流体力学的な制限である「帆立貝定理」を理解することが目標です。これは「時間反転対称的な変形では微生物は流体中を進めない」というものです。第3部では講演者の最近の研究結果から、2つトピックを選んでお話する予定です。ひとつめは、微生物が流れに逆らって泳ぐ現象(走流性として知られる)に関する数理モデルで、もう一つは、高速カメラで撮影された顕微鏡画像から微生物の泳ぎを流体方程式の解として表現する方法についてです。
いずれも理工系大学学部低学年のベクトル・テンソル解析の知識があれば理解できるものを想定しています。流体力学や生物に関する知識は前提としていません。
タイムテーブル
時間は目安です。
時間 | 内容 | 担当 |
---|---|---|
10:00-10:30 | 入場 | |
10:30-12:00 | 講演1 | 石本先生 |
13:00-14:30 | 講演2 | 石本先生 |
15:00-16:00 | 講演3 | 石本先生 |
ランチは駒場キャンパスの学食や近隣のレストランなどをご利用ください。
また、終了後に2時間程度の懇親会を開催しますので申し込みフォームより事前にご連絡ください。(人数把握のためのアンケートですので後日変更は可能です。)
参考文献
本講演の参考文献
- A Coordinate-Based Proof of the Scallop Theorem by Kenta Ishimoto and Michio Yamada
- 微生物の運動と流体力学: 帆立貝定理とその破れ
関連分野の推薦教科書
- テンソル解析の入門
田代,テンソル解析(裳華房, 1981) - ナビエ・ストークス方程式の数理解析
岡本久,ナヴィエ‐ストークス方程式の数理(東京大学出版,2009) - 連続体力学(流体力学+弾性力学)の理論
Gonzalez & Stuart, A First Course in Continuum Mechanics (Cambridge University Press, 2008) - 流体力学全般
今井功, 流体力学(前編) (裳華房, 1973)
巽友正, 流体力学 (培風館, 1995)
Acheson, Elementary Fluid Dynamics (Oxford University Press, 1990) - マイクロスケールの流体力学
Barthes-Biesel, Microhydrodynamics and Complex Fluids (CRC Press, 2017) - 生物流体力学
Lighthill, Mathematical Biofluiddynamics (SIAM, 1987)
谷下,山口, 生物流体力学 (朝倉書店, 2012)
予習会について
5/26(日) 、6/8(土)に予習会を開催する予定です。
ベクトル・テンソル解析やナビエ・ストークス方程式の導出を行います。
ご注意
ありがたいことに毎回多数のお申込みがあり、すぐに満席となることがございます。
当日までの事前連絡なくご欠席されることが続いた場合、申込みをお断りさせていただくことがございます。
より多くの方にご参加いただけるよう、ご理解とご協力をよろしくお願い致します。
また、会場である東京大学への直接のご連絡はお控えいただきますようよろしくお願いいたします。
迷った、会場の入り方が分からないなどの場合は
- 当ページにございます「イベントへの問い合わせ」 から
- 主催の twitter : https://twitter.com/mathcafe_japan にリプを送る
のいずれかで連絡をしていただけたらと思います
数学カフェについて
2015年3月より東京にて開催。 数学の諸分野の最先端を誰でも学べる場を作りたいと考え、月に1回、およそ6時間の講演会を開催しています。